正規表現技術入門は計算機を愛するすべての人が読むべき本

技術評論社様より、 正規表現技術入門 の電子書籍版を献本して頂いた。

正規表現技術入門

正規表現技術入門

数年前にCodeZineで 正規表現エンジンを作ろう という連載を書いたことがあった縁で、実は初めにこの本の執筆するお話を頂いた。しかし、自分は独学で学んだだけの素人であるし、兼ねてから @sinya8282 さんの正規表現への異常なまでの愛情は知っていたので、編集者さんにお願いをして自分の代わりに @sinya8282 さんへ執筆を依頼してもらうことにした。

それから約一年半、今回献本を頂くまで一切出版には関わってないのでこの本に関しては完全に部外者という立場だが、本の内容を見て本当に @sinya8282 さんに代わっていただいてよかったと感じた。この本には過去に自分がCodeZineで書いたような、前提知識のない方向けの正規表現の理論についてももちろん書かれている。筆者も言うように、正規表現ほど根柢の理論抜きにプログラマに利用されているものも珍しい。正規表現の理論は計算可能性と切っても切り離せない関係があり、計算機を扱う者であればその背景まで詳しく知っておいて損はない。また、Appendixにはさらに専門的、数学的な内容が追加されている。ここまで専門的な内容を体系的にまとめた本は、他に類を見ない。第一線の専門家が書いた内容を日本語で読めるのは大変ありがたいことだ。

また、開発者であるk-tanakaさん自らが書かれた鬼雲の実装に関する話も非常に詳細で面白い。Rubyを使う人であればだれでもお世話になったことがある正規表現エンジンであり、また、プログラマがよく利用する正規表現エンジンのほとんどはバックトラックを用いて実装されているため、この章に一番興味を持つ人も多いかもしれない。ビルドやデバグの方法まで丁寧に書かれているので、鬼雲について深く知りたい人は一度手を動かしてみるといい。

過去にも何冊か正規表現の本は出ているが、実装に注目して書かれているという点で 正規表現技術入門 は他の本とは一線を画している。正規表現はよく使うけど、自分で実装しろと言われたら果たしてできるだろうか。そんな疑問を一度でも持ったことがある方には、ぜひこの本を手に取ってもらいたい。答えはすべてこの本に書かれている。